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49、音声訓練、基本の訓練

患者さんによって症状や程度は様々なので、状態をみながら行っていくのはもちろんだが、特にけいれん性発声障害の患者さんに共通の構造上の問題として、舌骨や喉頭の動きが悪いということがあると思う。

舌骨や喉頭周りの筋肉というと、解剖学的には、外喉頭筋という、舌骨や喉頭を引き上げたり引き下げたりして外側から動きをつけつつ支えている筋肉と、内喉頭筋という、喉頭の中にあって声帯を開いたり閉じたり、声の強さや高さを作ったりする筋肉のことだ。
これらの筋肉をバランスよく動かせるということが自由な発声につながる。加えて、連動する舌根や軟口蓋の柔軟な動きも大切だ。 

音声訓練というと発せられた声ばかりに注意が向きがちだが、その声を作っている問題の箇所まで逆にたどっていくとそこに行き着くことになる。
舌骨や喉頭周りの筋肉、舌骨や軟口蓋の動きが悪いということは、付着している筋肉の伸び縮みが自在ではない、偏りがあるということなので、治療と連動して行っていくことは大切だと思う。
喉頭周りの筋肉は、さらに遠くの筋肉ともつながっているので、全体治療も大切にしているということは、何話か前の時に書いた。

よく、力まない発声をするために溜息から始めると言うが、詰まりのひどい患者さんは、吐く息に少しでも声が混じると途端に詰まってしまう。もしくは、ガッ、ガッ、ガッと途切れ途切れにブレーキがかかった発声になってしまう。
私もそうだったので、出来ないことはあまり深追いしないで次の手を考えることにしている。
腕や上体をストレッチしながら弾みで声を出してみたり、椅子の背もたれを両腕で下に押しながら声を出してみたり、上下の歯の隙間からシーという強めの呼気を吐き、徐々に途切れ途切れから単音を出しさらに徐々に長い音に移行してみたり、時には吸気発声で音を出し所々に呼気の発声を混ぜてみたりなど、比較的うまくいきそうなものから徐々に詰まったり震えることが少なく長音が出せるように持っていくということをしている。

いろんな工夫できるようになったら、できた時の感覚を、小細工を使わずに自分の身体や喉頭周りの感覚で再現することをしていく。
この時に、最近話題のルーティンのように、きっかけとなる姿勢やイメージがあると安定した状態を作りやすくなる。
私の場合は、何話か前で少し触れたが、腰は地面に頭は上に、上下で引っ張り合う力を声に変換していくことをしている。縮こまって中心に集まって支えるのではなく、外側に向かって伸びていく力で支える感じだ。
また別の機会で詳しく触れたいと思う。

ともあれ、この長音が定着すること自体が、患者さんにとってはとてつもなく困難で最大のハードルだ。
好不調は日常的にあるが、それでもいい方向に向かっている感触がつかめたら第一段階クリアで、私の場合は、これまでが長い日々で、これ以降は、これ以前に比べたらグッと楽に声が出せるようになった。

長音を出すことにそれほどストレスがなくなってきたら、『あ』と『え』を続けて発声することをしたり、3度の音階練習で、徐々に喉頭(喉仏)を動かすことをしている。
特に音階練習では、3度の高低を一気に出すのではなく、その間の無限に存在する周波数を全部なぞっていくつもりで少しづつ高さを変えてつないでいくことをする。
3度がきつかったら半音、2度と徐々に上げていってもいい。
長音で声を出した時のように、ガ、ガ、ガとブレーキがかかる感じや、高い音に移行しづらくて押しつぶされたような音になったりするが、最初の段階で行った同じ高さの長音を安定して出せるようになった過程を思い出したりしながらやってみる。
『低』から『高』、『高』から『低』、『低』から『高』行って『低』に戻るなどを行ってみると、苦手な方向や得意な方向がわかってくる。
『高』『低』のつなぎが滑らかに移行できるようになると、普通の会話もグッと楽になる。

私の観察だが、ガ、ガ、ガとブレーキがかかったようになったり震えたりするのは、声帯筋が一定の緊張を保っていられない状態で、高低の移行がしずらいのは喉頭(喉仏)の動きが悪い状態で、どちらもそれを補うために周辺の筋肉が頑張るので、それが全体としてきつく締まるという方向の力になるのではないかと思っている。
なので、声帯筋の緊張を一定に保つ長音のトレーニングと、喉頭(喉仏)を動かすという基本のトレーニングで、その神経回路をしっかり定着させることが大切だと思う。
一般的には、『力まない発声』とか『楽な発声』と言って、脱力、脱力の方向が大切みたいな風潮があるが、私はむしろピシッと使う部分を自分の中で明確にしていく作業をしているような感覚だ。
もちろんガチガチに力が入った状態では、自分の状態の変化もわからない。脱力というのは、自分自身を観察できるスペースを内側に持つということだと思う。

基本のこの長音を安定させることと音階をゆっくりつないでいくという自分なりの訓練の方向性が見えたことで、私はもう完治するんじゃないかと以前の10倍ぐらい気が大きくなった記憶がある。

こうして文章にすればあっという間だが、実際 にはものすごく時間がかかっているし、揺り戻しもあったし、また自分以外の患者さんに向き合うと事情は異なってくる。

次回もさらに音声訓練に関して異なった角度から考察していきたい。



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