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53、音声訓練が有効なのは...

音声訓練について数回にわたって書いてきたが、訓練内容は患者さんの状態をみながら有効な方法を探しつつ試していくので、個々の変化を理解してもらえるように記述することは難しい。
しかし、患者さんの中には、ご自分に置き換えてその感覚を想像できる方も多いと思うので、なにかヒントになれば嬉しく思う。 
音声訓練の基本は、発声に関する器官の神経回路を適切につなげることで、その基本となる訓練として、私は発声のフィールドを広げるということが大切だと思うので、その考え方に沿って説明してきた。
今後も、患者さんの協力を得てより具体的な症例や変化を紹介していければと思う。

けいれん性発声障害と診断を受けた患者さんでも症状の度合いや出方は様々で、手術やボトックス注射を受けたあとの経過も様々だ。
音声訓練に関しても、患者さんによっては有効な方とあまり効果が見られない方が存在するが、その差は何によるものなのだろうか。

けいれん性発声障害は、中枢神経(脳)の問題で意思に反して声帯がきつく締まる(内転性の場合)運動障害であると言われている。
けいれん性発声障害と診断された患者さんの中には、この脳の指令の問題プラス様々な複雑な問題を内包している患者さんが多くいるのではないだろうか。
脳の指令という純粋な問題の割合が多ければ、手術やボトックス注射という物理的に声帯がきつく締まらなくする治療法に頼らざるをえなく、プラスアルファの問題の割合が多ければ、音声訓練の効果が高いのではないだろうか。

私が診てきた患者さんの中には、声を発することさえストレスという状態が続いて声を出さなくなり、出さないことがまた発声を困難にするという悪循環に陥っているとみられる方や、発声障害と同時に、どこかにケガや長引く後遺症があって発声障害の症状が増悪しているとみられる方、長引く症状にもがいているうちに、発声の特別な癖ができてしまっている方などがいらして、そういう方は、治療と音声訓練で効果はあったと感じている。

また、ボトックス注射は効果があるのは通常3ヶ月ほどと言われているが、患者会で話を聞くと、半年以上経っているが調子を保っているとか、1年以上経つが大丈夫という患者さんもいた。
効力は切れているはずだが締まらないままだということは、随意的にもコントロールできているということではないだろうか。
ボトックス注射と音声訓練を並行して取り入れていくことで、さらに注射の間隔を伸ばしていけるのではないかと注目している。

やっかいなのは、発声障害に伴う不安やショックな体験が心的外傷となって残り、同じような状況で、その記憶が逆に発声障害を引き起こすこと。
これは、本来の発声障害の問題に、さらに脳の別の部分が反応して複雑な回路を作ってしまっているのかもしれない。
私の場合は、ある時期からこっちの方へ移行してしまっている気がする。
以前は、緊張はあっても、職業柄いざ声を出すとちゃんと声が出ていることで徐々に落ち着けた記憶があるが、発症後は、声を出せば出すほど、あ、やっぱりダメだと震えや詰まりが加速する。
心因性は、またそちらを専門に診る方がいると思うが、私は、自分の発声障害の延長上で起こったことなので、発声を通して解消していきたいと思っている。
そして述べてきたように、発声のフィールドを広げるということに無心に向きあえたことで、徐々にどっしりした自分を取り戻してきたと思う。

音声訓練でどのくらい効果があるかは、患者さんのみ知ることだ。
よくなったように聞こえても、水面下ではものすごい違和感と闘っていることもあるし、
日常生活ではほとんど忘れているぐらいになったが、微かに縛りがあることもある。
どれぐらいのレベルで効果があったというのか、妥協するもしないも、よしとするもまだとするも患者さんの評価による。
これは、音声訓練のみならずほかの治療法にも言えることだと思う。
私の中でも、もう大丈夫、やっぱりダメだ、が延々と繰り返されてきた。
それでも、絶望の淵から回復してきた事実は、時々ぶり返すことを差し引いても、充分効果があったと思っている。


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