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21、私の中の誰か

患者さんから、ジストニア(傾性斜頚)の方の体験記(電子図書)をご紹介いただいた。
『ジストニア国探検記』大友鳥餅著
ご紹介くださった患者さんもジストニア(咬筋)で、治療に通ってくださっている方だ。

テーマにふれる前に、『ジストニア』について簡単に説明すると、
自分の意思に反して、筋肉が収縮し、ねじれるように動いたり、硬直、痙攣といった症状が、全身あるいは身体の一部に出る難治性の疾患の総称。
症状が首に出るのが『傾性斜頚』、発声の筋肉に出るのが『けいれん性発声障害』で、共に局所性ジストニアの一種。
脳や神経系の障害によるものと言われている。
原因不明の特発性ジストニア(一次性)と、他の疾患やケガが原因で起こる症候性ジストニア(二次性)がある。
本の著者も治療室にいらっしゃ患者さんもすべて一次性。

体験記では、自分の意に反して首を動かすものを『ドミンゴス』と命名し、その症状が出ることを『ジストニア国』にいると表現。
発症から症状の推移、それに伴って変わらざるを得ないプライベートの生活、仕事などにまつわることが、軽快な語り口を想像させる文章で綴られていた。
しかし、内容は決して楽しいものではない。

首が勝手に右を向くという奇妙な現象が、徐々に日常生活を脅かしていく。
医療機関を訪ねるにも、何科を受診したらよいのか戸惑い、訪れた医療機関でのぞんざいな扱いに苛立ち、やっとたどり着いた専門医で『ジストニア』と診断され納得するものの、原因不明、治療法も確立されていないことに愕然。
その後も、職場での病に対する認識のなさにやるせない思いを抱き、自宅療養、退職、引越し…と自身を取り巻く環境は、症状の変化とともに変わっていく。

その間、『ドミンゴス』と名づけた自分の症状をつぶさに観察、どうしたら症状が軽減するのか、自分の身体で試したこと、医療機関のみならず、民間療法からパワースポット巡りまで、さまざまな体験が綴られていた。
読み進めていくうちに、私自身との共通点をいくつも見つけて、思わず大きく頷いたり、胸の内が想像できてしんみりしてしまったり。
明るい語り口の影に、どれほど苦難があったのか。

とりわけ、『ジストニア国』、『ドミンゴス』という表現には、筆者の複雑な思いが込められている気がした。
自分の身に起こったことではあるが、自分ではないような感覚。
私も、症状がひどい時は、自分自身が何かに乗っ取られた気がした。
受け入れらずに、しかし否定もできない現実。
ならば、いっそ自分に近いところにいる何者かの仕業として観察してやろう。
そうでもしないとやっていられない。
そんな心境だったに違いない。

私もそうだった。
私の中の誰かは、『クロス』と名乗った。
そして、無風状態で立ち尽くす状況に、少しだけ楽観的な風穴をあけてくれた。