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18、北風と太陽

クラニオのトレーニングコース初日の出来事は、現在、治療する側にいるきっかけを作った出来事の一つだ。
後日談をニ、三、付け加えると、この体験をきっかけに、その後数週間の間、どこにいても何をしている時でも、喉に意識を向ければ、即座にクラニオのリズムを感じることができた。

また、 環椎後頭関節(第一頚椎と後頭骨の接触面、盆の窪)の緊張を少し緩めるだけで、首が不思議な動きをしだした。
始めは、自分だけが感じるクラニオのリズムに合わせて、ほんのわずかに首が伸びたり縮んだりする動きを繰り返すだけだったが、徐々に内側から突き上げるような力が大きくなり、首の回旋運動ほどに大きくなった。
自分から動いているわけではないのだが、自然に回ってしまうのだ。

あまりに不思議な感覚に、反対側に回してみたらどうなるか試してみようと一旦止めようとしたら、ちがうちがう、そっちじゃないと言わんばかりにさらに大きな力で戻ろうとする力が働いて驚いた。
また顎関節も、下顎がわずかにリズミカルな動きを刻むという現象が起きた。
この動きが出ている時に、うなじや肩、顎関節に手を触れてみると、いつもは凝って硬い筋肉が、筋繊維の束の重なりに指が入るほどに柔らかくなっていて、筋膜がぐわーんとうねりながら伸び縮みするのを触知できた。
おかげで、その時期数週間は、人生で一番、首、肩、顎の凝りがなくなった時期になった。
外力で押したり揉んだりするのではなく、自分自身の骨の動きを反映して筋肉が動くので、深いところから緩んでいくのだ。
後に、イソップ童話の『北風と太陽』に関連付けて、自分から凝りを解放していくこの療法を
『太陽療法』と呼ぶことにした。

程なく、自分の身体だけでなく他人のリズムも拾えるようになったが、リズムが浮き上がってきたり、首が大きく回旋するという、自分の身体で感じた劇的な出来事は影を潜めた。
そのときは、まるで私の中に別人格の誰かがいて、その存在に気づいたことを歓迎してくれたと感じるような出来事だった。

私の中のもうひとりの私。
それほど深刻に分析しなくても、理屈では良かれと思って頑張ったり律してきたことが、少しづつ身体にブロックを作ることはあるのだと思った。
不思議な回旋でふにゃふにゃになった私の首が、そのことを物語っているようだった。
この後にクラニオで、アンワインディング(巻き戻し)という現象が起こるということを学んだ。
複雑にもつれた糸が、逆戻しでほぐれていくように動き出すことだ。
その時の私に起こっていたのは、まさにこれだった。

身体は、自分を知るための一番身近な存在だ。常に一緒にいるから当たり前だが。
ニュートラルな自分に入っていけるちょっとしたコツがわかって、意識を向けさえすれば、気づかなかった自分に届く。
ただ、優先順位一番の知りたいことにダイレクトにつながるとは限らず、ちょっと遠回りして違うことを見せてくれたり、ちょっと遊んでいきなさいよと誘惑の仕草を見せたりするらしい。