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17、身体からのメッセージ

喉頭(声帯を収めている甲状軟骨がある場所)の動きをつぶさに追っていくと、二つの極で往復していることがわかった。
グーっと上の方へ押し上げられている時と、反対に下へ押し下げられている時だ。
その動きが交互に満ちては退いてを繰り返している。
確かに身におぼえのある感覚だ。
ぼんやりその動きを感じているうちに、あることがその動きに重なった。

これは、私が声を出している時の喉頭の動きだ…
グーっと上へ上がる時は、裏声だけで発声していた以前の発声の感覚。
下へ押し付けられるときは、裏声を封印し地声で発声している今の感覚だ。
二つの動きは、まるで対極を往き来することでバランスをとるように、リズムを刻んでいた。

ここから先は、そのトレーニングコースの後、少し時間をかけて私の中に落ちてきたことだ。
画一的な表現から脱して、新しい自分の表現を求めた私は、その象徴である裏声を嫌悪して封印しようとした。
前に進むということを、今を否定する発想でしか成し遂げる術を知らなかった自分。
クラニオのリズムに現れた二つの動きは、発声障害に陥る前と後の私の声の出し方を、端的示してくれたのではないかと気づいた。 

医学的に説明できるものがあれば、解決の糸口は見えるかもしれない。
しかし、悪いところは見当たらないという今の私の状況下では、この八方塞がりの状態から抜け出すための動機づけが必要だ。
そのきっかけを自分自身の身体が教えてくれた。
これは真実だと思った。
どんな権威ある人から言われた言葉よりも、自分の内側から発せられた気づきは重い。
大げさかもしれないが、私はそれまでの人生の中で、腑に落ちるということを最もリアルに感じた体験だと思った。

現実的な声の出し方に重ね合わせてみた。
喉頭が常に上の方にあり、頭や鼻の奥に響きがある状態が 、それまでの裏声の発声だ。
これが嫌で、始めの頃は、自然な話声の高さまで音を下げ、しかもほとんど地声が楽に出せる高さのみを使い、あまり圧をかけない発声の仕方をしていた。
ある時期から、音が割れるかすれるなどの変化や、膜が一枚張り付いたような感覚がでてきた。
続いて詰まる、音が脱落する、締まるというのが出てきた。
一つの単語での音の高低やワンセンテンスでの高低が滑らかに発声できず、締まったり詰まったりする現象だ。
慌てて、依然の声の出し方に戻してみようと思ったときには、その方法がわからなくなっていた。
つまり、喉頭が下がったままの発声を強いてきたせいで、上へ上げる使い方ができなくなってしまっていたのではないだろうか。
偏った使い方の背景には、心理的な縛りがあったということだ。
この偏った使い方については、その後も幾つかのワークで、やはりと思えることに気づいた。
ともあれ、自身の身体からメッセージを受け取ったことは、重要な出来事だった。
以来、迷うことがあったときは、心静かにこの時のことを思い出す。
答えは自分の中にあるということを、身をもって体験したこの出来事を。