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9、西洋医学のアプローチ

初期の頃はきっと喉に何かできたのではないかと思い、医者に診てもらうことにした。
普通の耳鼻科を受診したが、症状の原因となるようなものは何もないという。
やはりおかしな方向に向かっていると気づいてからは、専門医に診てもらった。
当時、都内で名医と言われる音声の専門医はすべて訪ねた。

共通して言われたのは、声帯に多少の炎症はあり、声帯の閉じ方も少し隙間があるが、ポリープや結節などの器質的なものは何もない。
この状態で、私の訴えほど声が出しにくいとは考えられないということだった。

ドクターによっては、ビタミンの静脈注射をしてくれたり、炎症を取るためにステロイドのスプレーを出してくれたりした。
そして、なるべく声を使わないことをすすめられた。

一人だけ、声を出す筋肉にボツリヌス菌を注射して、麻痺させる方法があると話してくれたドクターがいた。
当時診ていただいたドクターからは、けいれん性発声障害という病名は聞いたことがなかったが、今思うと、一部ではやはり認知されていたのだろう。

自分がその治療法を受けるという覚悟はなかったので、聞き過ごした。
そのドクターは、自律訓練法のグループを紹介してくれた。
一度参加してみたが、残念ながら当時の私の心と身体には届かなかった。
もっと早く確実な変化が欲しかった。

都内の専門医をひとあたり受診したあたりで、精神科を紹介された。
当時は、咽喉頭神経症と診断された。
抗鬱剤と安定剤を処方したいと言われたが、薬には抵抗があったので、一番弱い安定剤だけ処方してもらった。

一時期飲んだことがあったが、残念ながらコントロールできているという感じはなかった。
飲んでいても飲んでいなくても、関係なく不調はやってくるし、関係なく良い時もやってくる。

ある時、単発の仕事でスタジオに入る30分ほど前に飲んだら、本番でひどい発作が来たことがあった。
呼気からスムーズに吐きにくく、あーという長音も出にくい…と思った途端、ア、ア、ア…と細かく断続的な引っかかりのある音になった。
『大きな振え』と命名した状態だ。
焦りと恐怖で半ばパニックになりながらなんとかごまかしたが、薬は反作用の働きが出るリスクを感じて、それ以降安定剤もやめた。

他に、自分で調べて、星状神経節ブロック療法を受けたいと当時の精神科の担当医に話しこともあった。
喉の近くにある交感神経の神経節に麻酔の注射をし、交感神経の過緊張を緩めるというものだ。
私の問題には根本的には有効な治療法ではないが、希望するのであればということで受けることにした。
特に変化は感じなかった。
喉に注射するという恐怖感の方が勝って、2回でやめた記憶がある。

他にも、喘息の検査を受けたり、婦人科、甲状腺の専門医などを訪ねたが、いずれも私の訴えを説明できるような原因は見つからなかった。
ここに至って、万策尽き果てた感があり私の西洋医めぐりは終わった。